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AIに指示が伝わらない理由|実際のズレから原因を分解した話
実践ログ

AIに指示が伝わらない理由|実際のズレから原因を分解した話

AIに指示が伝わらないのはなぜか

「ちゃんと書いたのに、なんで違う出力になるんだろう?」と感じたことはありませんか?

AIに指示が伝わらない原因は、確かに存在します。ただしこれは「原因を知れば解決する問題」ではありません。原因を理解しても、どの基準で修正すればいいかがわからないと、同じズレが別の形で出てきます。

この記事では、私が実際に経験したズレをもとに「どこでズレるのか」の構造を整理します。解決の手順ではなく、ズレの発生メカニズムを先に把握することを目的にしています。

実際に起きたズレ:今回のケース

私が実際に体験したズレを3つ紹介します。これはbizinets.lifeの記事パイプラインを組んでいたときのことです。

ケース1:トップページ設計なのにCTAが混入した

「このページはトップページです。H1とH2の構造を設計してください」とプロンプトに書いたつもりでした。ところが出力には、途中から「お問い合わせはこちら」というCTAが含まれていました。なぜそうなったかというと、直前のプロンプトでCTAの設計をしていたからです。文脈がまだCTAを話していると判断されたようです。

ケース2:フェーズが崩れた

「Phase 1:情報収集、Phase 2:構成設計、Phase 3:本文生成」という3フェーズを1つのプロンプトに書き込みました。最初は情報収集だけをやってほしかったのに、AIはそのままPhase 2の構成設計まで進めてしまいました。「フェーズ1だけ実行」という明示的な制約を書いていなかったためです。

ケース3:意図と違う記事タイプが出てきた

「ログ型の記事を書いてください」と書いたところ、出力はまとめ型のハウツー記事になっていました。「ログ型」という言葉の定義を共有していなかったため、AIは一般的なブログ記事のフォーマットで補完してしまいました。

なぜこのズレが起きたのか

情報が多すぎて文脈が分散した

1つのプロンプトに「やること」を詰め込みすぎると、AIはどの情報を優先すべきか判断できなくなります。先ほどのケース1で言えば、「トップページの設計」という指示と「直前のCTAの話題」が混在した状態でした。AIは文脈の流れから「CTAの話をしている」と判断したのだと思います。

情報が多くなるほど、AIの注意が分散します。重要な指示が相対的に薄まってしまうのです。これは私が実際に何度も経験したパターンです。

「やらないこと」が明示されていなかった

AIは指示に書かれていないことを、文脈から推測して補完します。「Phase 1だけやってください」と書かなければ、「Phase 1〜3が書いてあるなら全部やるだろう」と判断するのは、ある意味では自然な動作です。

禁止事項を書かないことは、AIに自由な補完を許可することと同じです。 「〜しない」「〜は除外する」という明示的な制約がなければ、AIは可能な限り「よかれと思って」やってしまいます。

フェーズが固定されていなかった

複数のフェーズをまとめて渡すと、AIはどこまで実行するかを自分で判断します。「Phase 1の出力を見てから次を指示する」というフローを組むつもりでも、AIにとっては「全部のフェーズが目の前にある」状態です。実行範囲の境界を明示しない限り、フェーズは崩れます。

ここまで読むと「では制約を書けばいい」と思うかもしれません。ただし、「何を書けば十分な制約になるか」の判断基準がないと、制約を足しても別の場所でズレが出ます。この記事で整理できるのは「どこでズレるか」までです。

ここまでで「ズレがどこで起きるか」は見えてきました。
ただし、このままだと「制約を書けばいい」という方向性はわかっても、何をどの粒度で書けば十分かは判断できません。
なぜなら、それを決めるための判断基準がまだないからです。

→ 判断軸の整理はこちら

修正前と修正後の比較

実際にどう直したかを見てもらうのが一番わかりやすいと思います。

修正前のプロンプト(ケース2):

このパイプラインを実行してください。

Phase 1:情報収集
Phase 2:構成設計
Phase 3:本文生成

テーマ:AIプロンプトの失敗事例

このプロンプトの問題は、実行範囲の制約がないことです。AIは「Phase 3まで書いてある」という文脈から、3フェーズをまとめて実行しようとします。

修正後のプロンプト:

【今回の実行範囲:Phase 1のみ】
Phase 2・Phase 3は今回実行しない。出力はPhase 1の結果だけにする。

Phase 1:情報収集
テーマ「AIプロンプトの失敗事例」について、
検索意図・読者の課題・競合記事のテーマを整理してください。

修正後の出力は、Phase 1の情報収集のみになりました。ポイントは2つです。「今回の実行範囲」を冒頭で宣言したことと、「やらないこと」を明示したことです。この2点だけで出力のズレがほぼなくなりました。

ただし、この書き方がそのまま自分の環境で再現できるかどうかは別の問題です。どの粒度で制約を書くか、どのタイミングで文脈をリセットするかは、プロンプトの構造によって変わります。「禁止を書く」という方向性はあっていますが、何をどう書くかを判断するための基準が別途必要になります。

AIがズレる原因の共通パターン

ここまで紹介してきた実体験を振り返ると、どのズレにも共通する構造が見えてきます。あなたの手元のプロンプトにも当てはまるものはありませんか?

実際のズレを整理すると、4つのパターンに集約されます。

目的が曖昧: 「記事を書いてください」だけでは、記事のタイプ・長さ・対象読者がすべてAIの補完に委ねられます。ログ型なのかハウツー型なのか、初心者向けなのか実務者向けなのかを明示する必要があります。

前提が不足: AIは「自分が知らないこと」を知らないふりをしてくれません。前提として共有すべき定義・フォーマット・過去の文脈が抜けていると、AIは一般的な知識で補完します。

制約がない: 実行範囲・対象外・優先順位が書かれていなければ、AIは「よかれと思って」広く解釈します。これが意図外の出力の最大の原因です。

禁止事項がない: 「〜しない」「〜は含めない」という制約がないと、AIは排除すべき要素を排除してくれません。

この4つを見ると「全部書けばいい」という結論になりがちです。ただし、何をどの順番で・どの粒度で書くかは、プロンプトの用途と構造によって変わります。パターンを知ることと、自分の状況に当てはめて判断することは、別のスキルです。

AIのミスを減らす使い方

「どう修正すればいいかわからない」という方も多いと思います。実際にやってみて効いた方法を3つにまとめます。

フェーズを固定する:

複数ステップがあるなら、1回の指示で1フェーズだけ実行させます。

  • 今回の実行フェーズが明示されているか → NOなら冒頭に「【今回:Phase Xのみ】」を追加する
  • 次フェーズへ自動で進んでいないか → NOなら「次は指示があるまで進まない」と書く

禁止を書く:

やってほしくないことを先に列挙します。

  • 除外すべき要素が文中に書かれているか → NOなら「〜は含めない」「〜は今回対象外」を冒頭に追加する
  • 曖昧な表現が残っていないか → NOなら具体的な定義を追加する

一度にやらせない:

複雑なタスクは分割します。

  • 1プロンプトで求めているアウトプットが2種類以上あるか → YESなら分割する
  • 出力の長さが1000トークンを超える見込みか → YESなら工程を分ける

私の場合、この3点を意識し始めてから、プロンプトの書き直し回数が1記事あたり平均4〜5回から1〜2回に減りました。具体的には、記事設計フェーズで「禁止リスト」を先に書く習慣をつけてからです。この変化は体感として明確で、1記事あたりの設計時間が30分以上短縮されたと感じています。

ただし、この手順を同じように実行しても、同じ結果になるとは限りません。「何をフェーズとして切るか」「どの禁止事項を先に書くか」という判断は、プロンプトの構造と目的に依存します。手順を知ることと、判断基準を持つことは別です。

この後どうなったか

3つの改善(フェーズ固定・禁止明示・タスク分割)を実際に取り入れてから、私のパイプラインはかなり安定しました。

以前は1つの記事を生成するたびに「意図外の出力を修正する」という後処理が必ず発生していました。修正に使っていた時間は1記事あたり20〜40分ほどです。改善後は、後処理がほぼゼロになりました。記事全体ではなく、フェーズを切って進めるようにしたことが最も効いたと思います。

現在も完璧ではなく、新しいプロンプトを書くたびに「この制約で十分か」を確認するプロセスを続けています。検証中の項目として、「文脈をリセットするタイミング」と「禁止リストの粒度」をまだ調整しているところです。

まとめ

ここまでの内容で、AIに指示が伝わらない原因の構造はある程度見えてきたと思います。

ただし、この記事で整理できたのは「どこでズレるか」という現象の分類までです。ズレを再現なく直すためには、もう一段階必要なものがあります。それは「何をやるか」ではなく「何をやらないか」を決める判断の基準です。

この基準がないと、制約を追加するたびに別の場所でズレが出るというループに入ります。手順を実行することと、状況に応じて判断することは別のスキルであり、後者を持たないとプロンプト改善は場当たり的になりがちです。

この「判断の基準」をどう設計するかは、bizinets.biz の判断軸ページで整理しています。

ここまでで、ズレの構造と4つの原因パターンは整理できました。
ただし、このままでは自分のプロンプトにどこから手を入れるかは判断できません。
なぜなら、「何を優先して・どの順番で直すか」という判断の軸が、まだ整理されていないからです。
この軸がない状態で修正を重ねると、別の場所でズレが出るループに入ります。

→ 判断軸の整理はこちら

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